クレパスとクレヨンの違いとは?原料と年齢で選ぶ失敗しない決定版
子どもの入園準備やお絵描きデビューの際、文房具売り場で「クレヨン」と「クレパス」のどちらを購入すべきか立ち尽くした経験を持つ保護者は少なくありません。見た目は酷似している両者ですが、製造時の原料比率や芯の硬さ、子どもの発達段階に応じた適正年齢には明確な境界線が存在します。
教育現場や家庭内での選択ミスを防ぐために、画材ごとの科学的組成の違いから、保育園・幼稚園が指定する教育的意図、服に付着した際の具体的な落とし方まで、現場データと専門的知見を交えて徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:クレヨンはワックスが多く硬いため「1〜2歳の線描き」に最適であり、クレパスは液体油が多く柔らかいため「3歳以降の面塗り・混色」に適している。
- 要点2:「クレパス」は株式会社サクラクレパスの登録商標(一般名はオイルパステル)であり、クレヨンの定着性とパステルの混色性を融合させた日本発の画材である。
- 要点3:園指定の理由は幼児の筆圧と造形カリキュラム(重ね塗り・スクラッチ技法など)の発達段階に直結しており、子どもの指先の発達に合わせて選ぶことが自己表現力を伸ばす鍵となる。
【徹底比較】クレパスとクレヨンの決定的な違い|原料・硬さ・対象年齢の真実
クレヨンとクレパスの最大の違いは、原料に含まれる「オイル(液体油)」と「ワックス(固形ロウ)」の配合バランスにあります。この成分比の違いが、描画時の硬さや発色、そして適正な対象年齢を大きく左右しています。
クレヨンは主原料に顔料と固形ワックスを使用しており、オイル成分がごく微量、あるいは含まれていません。そのため芯が非常に硬く、筆圧のコントロールが未熟な幼児が力任せに握りしめても「折れにくく、手が汚れにくい」という物理的特性を持ちます。一方で、硬質ゆえに広い面を塗りつぶしたり、異なる色同士を混ぜ合わせたりする表現には不向きです。
対してクレパスは、顔料とワックスに加えて多量の液体油と体質顔料を練り込んで作られています。油分が豊富なため質感は非常に柔らかく、軽い筆圧でも鮮やかな発色が得られます。紙の上で色を塗り広げる「面塗り」や、色を重ねて新しい色を作る「混色・重色」、油分を削り取る「スクラッチ技法」など、多彩な表現技法に対応できるのが特徴です。
これらを踏まえると、対象年齢の目安は明確に分かれます。握力が弱く殴り書き(スクリブル)を中心に行う1歳〜2歳児にはクレヨンが適しており、手首のスナップや指先の力加減が発達し、絵画表現の幅が広がる3歳児(年少)以降にはクレパスが真価を発揮します。

【比較データ表】クレパス・クレヨン・クーピー・オイルパステルのスペック対比
文房具売り場で混同されやすい主要な子ども用画材について、客観的な製品スペックと教育現場での評価基準を整理しました。
| 項目 | 詳細・数値データ | 一般的な基準・相場 | 編集部の見解・評価 |
|---|---|---|---|
| クレヨン | ワックス主体(油分微量) 芯の硬度:高 対象:1歳〜3歳 | 折れにくさ重視 実勢価格:500円〜900円(12〜16色) | 線画専用。ファースト画材として最適だが、塗り絵や混色には限界がある。 |
| クレパス (サクラクレパス) | 液体油+ワックス+体質顔料 芯の硬度:中〜軟 対象:3歳〜小学校低学年 | 表現力・混色性重視 実勢価格:600円〜1,100円(16色) | 幼稚園・保育園の標準教材。色彩感覚や表現技法を養う上で最もバランスが優れる。 |
| オイルパステル (一般・専門家用) | クレパスと同系統の組成 芯の硬度:軟〜極軟 対象:学童〜プロ画材 | 重色・ぼかし技法特化 実勢価格:1,000円〜5,000円以上 | クレパスの一般名称。プロ用は顔料濃度が高く、油彩風の本格描写が可能。 |
| クーピーペンシル | 合成樹脂+顔料+ワックス 芯の硬度:硬(全芯色鉛筆) 対象:4歳〜小学生全般 | 消しゴムで消去可能 実勢価格:800円〜1,500円(12〜18色) | 手が汚れず細密描写ができるが、ダイナミックな混色や塗りつぶしには不向き。 |
【歴史と商標の秘密】「クレパス」は普通名詞ではない?サクラクレパス誕生の軌跡
日本国内で広く親しまれている「クレパス」という名称ですが、実は株式会社サクラクレパスが保有する登録商標です。海外や美術業界における一般的な品名分類では「オイルパステル」と呼ばれます。
大正時代末期の1925年、サクラクレパスの前身である日本クレィヨン商会の創業者らは、当時の教育現場が抱えていた深刻な課題に直面していました。当時輸入されていた西洋画材のクレヨンは線画に特化して混色ができず、一方でパステルは色彩表現が豊かなものの粉末が飛び散り定着性に欠けるという欠点がありました。
そこで開発されたのが、「クレヨン(Crayon)」の定着性と「パステル(Pastel)」の混色・展色性を併せ持つ画期的な新画材です。両者の名称を掛け合わせて「クレパス」と命名され、世界初のオイルパステルとして特許および商標登録が出願されました。
市場では、競合メーカーであるぺんてるの「ずこうクレヨン」なども高いシェアを誇ります。ぺんてる製品はクレヨンという名称を冠しながらも、独自の配合技術によって柔らかくなめらかな描き心地を実現しており、「クレヨンとクレパスの中間的なハイブリッド性能」を持つ製品として教育現場で広く支持を集めています。各メーカーの技術革新により、現代の学童画材は子どもの描画意欲を刺激する高度な品質を維持しています。

【現場目線で解明】保育園・幼稚園が「クレパス」を指定する教育的理由
幼稚園や保育園の入園準備において、園指定の学童用品リストに「クレヨン」ではなく「クレパス(16色程度)」が指定されるケースが目立ちます。これには幼児教育における明確な意図が存在します。
保育指針や幼稚園教育要領において、「表現」の領域は幼児の感性や創造性を育む重要な柱です。3歳を過ぎると、子どもは単なる線の殴り書きから、丸や四角などの輪郭を描き、その中を色で埋め尽くす「面塗り」へと移行します。
クレパスが指定される主な教育的理由は以下の3点に集約されます。
- 弱い筆圧でも鮮明に描ける:3〜5歳児の手指筋肉でも、紙の上にしっかりと色が乗り、自分の描いたものが鮮明に見えることで「自己効力感(描く楽しさ)」を獲得しやすい。
- 多様な造形技法の体験:下地に明るい色を塗り、その上から濃い色を重ねて尖った棒で削る「ひっかき絵(スクラッチ)」や、指先で色をこすり伸ばす「ぼかし」など、立体的な表現技法を実践できる。
- 混色による色彩感覚の育成:赤と黄色を重ねてオレンジを作るなど、色と色が混ざり合う視覚的変化を実体験として学べる。
1〜2歳児クラス(未満児)では折れにくさと誤飲・汚れ防止の観点から「硬質クレヨン」が使われますが、3歳児クラス(年少)以降で一斉にクレパスへの切り替えが求められるのは、カリキュラムが「線の運動」から「面の構成・色彩探求」へとステップアップするためです。
【実態検証とトラブル対策】服についたクレパスの落とし方と汚れ防止の裏ワザ
クレパスの唯一にして最大の弱点といえるのが、「服や家具に付着した際の汚れの落ちにくさ」です。クレヨンに比べて液体油が多く含まれているため、通常の洗濯機洗浄では油分が繊維の奥に残り、黒ずみやシミの原因になります。
家庭で落とす際は、「油には油をなじませて分解する」という化学的アプローチが不可欠です。水につける前に以下の手順を踏むことで、繊維を傷めずにきれいに落とすことが可能です。
- クレンジングオイルまたは台所用中性洗剤を直接塗布:水に濡らしていない乾いた状態の衣類に、メイク落とし用オイルか台所用洗剤を原液のまま汚れ部分に塗布します。
- 歯ブラシ等で叩き出し:裏側に当て布をし、歯ブラシの先でトントンと叩きながら、繊維の隙間に入り込んだ顔料と油分を浮き上がらせます(強くこすると汚れが広がります)。
- 40℃〜50℃のぬるま湯で乳化・すすぎ:油分を溶かすため、ぬるま湯を使ってしっかりともみ洗いし、乳化させて洗い流します。
- 固形石鹸で仕上げ洗い:残った色素には、アルカリ性の固形石鹸(ウタマロ石鹸等)を塗り込んで軽くもみ洗いし、その後通常の洗濯機で洗います。
家庭内での汚れトラブルを予防したい場合は、製品名に「水で落とせるクレヨン」「水洗いで落ちやすいクレパス」と明記された界面活性剤配合タイプを選択するのも有効な手段です。

【プロの結論】幼児のお絵描きはどっちを選ぶ?おすすめ基準と失敗しない選び方
画材選びで失敗しないための基準は、ブランドの知名度ではなく「子どもの月齢・身体発達」および「使用シーン」に照らし合わせて判断することです。
【クレヨン】が向いているケース・選ぶべき条件
- 対象年齢:生後12ヶ月〜2歳半前後
- まだ筆圧のコントロールができず、筆記具を机に叩きつけたり強く握りしめたりする時期。
- 紙からはみ出して机や床を汚すリスクが高く、片付けの負担を最小限に抑えたい環境。
- ブロック型や太軸タイプなど、小さな手でも握りやすい形状を重視したい場合。
【クレパス(オイルパステル)】が向いているケース・選ぶべき条件
- 対象年齢:3歳以上(年少〜就学前)
- 「アンパンマンの顔を描く」「太陽を赤で塗りつぶす」といった、輪郭と塗り分けの意識が芽生えた段階。
- 保育園・幼稚園の入園準備品として指定されている場合。
- 混色や重ね塗りなど、ダイナミックで自由なアート表現を伸ばしてあげたい場合。
【クーピーペンシル】を検討すべきケース
- 対象年齢:4歳後半〜小学生以降
- 手が汚れるのを極端に嫌がる子どもや、細かい塗り絵・文字の練習を兼ねたい場合。
- 消しゴムで消しながら試行錯誤して描く作業に向いている。
【クレパス クレヨン 違い】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:1歳児の初めてのお絵描きにはクレパスとクレヨンのどちらがおすすめですか?
A1:1歳児には硬めのクレヨン、特に握りやすいブロックタイプや卵型クレヨン、または「水で落とせるクレヨン」が適しています。1歳前後はまだ描くこと自体が身体運動(殴り書き)であり、柔らかいクレパスを与えると握りつぶして折ったり、手や部屋中を油分で汚してしまったりするためです。
Q2:クレパスとオイルパステルは全く同じものですか?
A2:実質的な画材構造としては同一のカテゴリです。「クレパス」はサクラクレパスの登録商標であり、「オイルパステル」はその一般名称(普通名詞)にあたります。ただし、学童用クレパスは安全性基準(APマーク・CEマーク等)に配慮した配合になっており、専門家用オイルパステルは顔料純度が高くさらに柔らかいという仕様の違いがあります。
Q3:園の指定が「クレパス」の場合、手持ちの「クレヨン」を持たせても大丈夫ですか?
A3:園の指示に従い、クレパスを新規に用意することを推奨します。一斉指導の授業で「色を重ねて混ぜる」「広い背景を塗りつぶす」という課題が出された際、硬いクレヨンでは周囲の園児と同じ表現ができず、子ども自身がストレスを感じてしまう原因になるためです。
Q4:クーピーペンシルとクレパスはどう使い分ければいいですか?
A4:目的によって使い分けます。クーピーは軸全体が芯の色鉛筆であり、細い線画や細かい塗り絵、筆箱に入れて持ち運ぶ用途に向いています。クレパスは太く鮮やかな発色を活かしたダイナミックな絵画や、混色を楽しむアート表現に向いています。
Q5:服にクレパスがついて時間が経ってしまった場合の落とし方は?
A5:時間が経って酸化した油分には、クレンジングオイル塗布後に45℃前後のぬるま湯で予洗いし、その後に酸素系漂白剤と重曹を1:1で混ぜたペーストを乗せてスチームアイロンの熱蒸気を軽く当てる方法が効果的です。ただし熱に弱い素材には注意してください。
まとめ:子どもの成長に合わせた最適な画材選びを
クレヨンとクレパスは、どちらかが優れているという優劣関係ではなく、子どもの手の運動機能と造形表現の発達段階に合わせた役割分担がなされています。
1〜2歳の線画期には「折れにくく汚れにくいクレヨン」で描く動作そのものを楽しませ、3歳以降の色彩表現期には「混色と面塗りが自在なクレパス」で創造力を刺激するのが、子どもの表現意欲を最大限に引き出すための最適解です。それぞれの特性を正しく理解し、子どもの「今」の発達段階にぴったり合った一本を選んであげてください。 (出典: クレパス クレヨン 違い(Yahoo!ニュース))